緑内障の視野を、一つの大きな砂時計だと想像してみてください。
上の部分にある砂が「これから先の人生で使える視野」、
下に落ちた砂が「すでに失われた視野」です。
視野検査のMDという数字は、
「どれくらい砂が下に落ちたか」をざっくり表す値だと思ってください。
0に近ければ、ほとんど砂は残っている状態、
マイナスが大きくなるほど、砂が下に落ちてきている状態です。
もう一つ大事なのが、砂が落ちていく速さです。
これが、視野検査を何回か続けて測ることでわかってくる
「1年あたりどれくらいMDが変化しているか(進行スピード)」です。
正常眼圧緑内障の多くの方は、
砂がゆっくり落ちていく程度にとどまることが多いと報告されています。
つまり、数ヶ月で一気に崩れてしまうというより、
年単位でじわじわと変化していく病気と考えられています。
ただし、中には砂が早く落ちてしまうタイプの方もいます。
私たちが定期的に視野検査を行うのは、
「今どれくらい砂が落ちているのか」だけでなく、
「砂がどれくらいのスピードで落ちているのか」を見極めるためでもあります。
視野検査で見ている世界は、
実は「たくさんの小さな砂時計」が集まっているようなものです。
どれか一部の砂時計は少し砂が減っていても、
全体としてはまだ十分に残っている、ということもよくあります。
また、視野の周辺は砂が減っていても、真ん中が残っていることもあります。
緑内障の治療は、残念ながら
一度下に落ちてしまった砂を元に戻すものではありません。
その代わりに、
砂が通る道をできるだけ細くすることで、
砂が落ちるスピードをゆっくりにすることを目指します。
患者さん一人ひとりの
- いまのMDの値(どこまで砂が落ちているか)
- 進行スピード(砂が落ちる速さ)
- おおよその寿命や生活スタイル
を考え合わせて、
「人生の終わりまで、見える力の砂をできるだけ残せるように、
落ちるスピードをどこまで落とすか」
という調整をしていくのが、緑内障治療のイメージです。

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